講師・荒牧てみの想い
― 音で寄り添うということ ―
人は、人生の中で何度も
「どうしていいかわからないとき」に出会います。
言葉が見つからないとき。
励ましが、かえって重く感じるとき。
そばにいたいのに、何もできないと感じるとき。
そんなとき、
音は「何かを変えよう」とはせず、
ただ、そっと“そこに居続ける”ことができます。
これは、私がハープセラピストとして歩む中で体験した
「音で寄り添う」という出来事の記録です。
父と、ハープと、静かな時間
コロナ禍のある日、
父が肺がんで緩和ケア病棟に入院しました。
食べることも、話すことも難しくなり、
私はただ、そばにいることしかできませんでした。
「何もしてあげられないなら、
せめて音で寄り添いたい」
そう思い、
小さなヒーリングハープをそっと奏ではじめました。
すると、息苦しそうだった父の表情がやわらぎ、
呼吸が少しずつ深くなり、
静かに眠りについてくれたのです。
それは奇跡ではなく、
音が本来持っている“安心を届ける力”でした。
音がつくる、休息の時間
それから亡くなるまでの間、
父が眠れるように、何度もハープを奏でました。
ハープの音が流れているあいだ、
父だけでなく、
そばにいる家族の緊張も、静かにほどけていきました。
そして最後のとき――
父はハープの音を聴きながら、
眠ったまま、静かに旅立ちました。
その表情は、
どこまでも穏やかで、あたたかく、
**私の中にある「優しい父のまま」**でした。
喪失と別れに寄り添う
ヒーリングハープという、やさしい時間
父を見送ったあと、
私は一人でハープを手に取りました。
涙を流しながら、
音にのせて父のことを思い、祈り、対話する――
それは、涙と音で心を洗い流すような時間でした。
家族もまた、
ハープの音に耳を傾けながら、
それぞれの思い出と静かに向き合っていきました。
悲しみは、すぐには消えません。
けれど、
「また音で会いにいける」
その感覚が、深い慰めとなっていったのです。
グリーフケアとは
「癒す」よりも、「ともに居続ける」こと
グリーフケアとは、
何かを治したり、乗り越えさせたりすることではありません。
ただ、
悲しみのそばに
ともに居続けること。
ハープは、
そのための
いちばんやさしい祈りの道具なのかもしれません。
Healing Harp Academy では、
音とともに、自分自身や大切な人に
そっと寄り添う時間を大切にしています。
